誰かが私を呼んでいる いにしえからの人形たち しずまりかえった古い街道をでこが 一杯竝んでる|近江の伝統郷土人形 小幡でこ

小幡人形とは

CIMG4352「でこ」という言葉は「土人形」のことを指します。江戸時代から明治時代にかけて、土人形のことを「でこ」と呼び、五個荘小幡町で作られる「でこ」のことを「小幡でこ」と呼ぶようになりました。

最近では「でこ」という言葉の代わりに「人形」という言葉を使い、多くの皆さんになじんでもらえるよう「小幡人形」とも呼ぶようになりました。

現在、「小幡でこ」を製作しているのは九代目である私のみです。そもそも「小幡でこ」は、今から約300年前に私の祖先にあたる細居安兵衛が作り始めたものです。初代当主の安兵衛は、はじめ京都通いの飛脚をしていました。

しかし、その道中で追い剥ぎや恐かつ等に度々会い、その弁償等がとても大きく、転業を考えるようになりました。
家にいながらにしてできる仕事を考えている時、当時盛んに売られていた伏見人形に着目するようになりました。

家が中山道に面していたこともあり、中山道を往き来する人々に向けて土産や玩具として販売することを目的に、伏見人形の製法を身に付け、五個荘小幡町で製作する「小幡でこ」を考案しました。これが由来となります。

特徴や製法について

CIMG13661「小幡でこ」は約400種類あり、3月、5月の節句人形を主体に祭りのみこしや縁起もの、風俗人形や軍人などがあります。種類は数多くありますが、彩色については全て共通の特徴があります。「小幡でこ」に使用する色は全て原色で、見た目は色鮮やかで印象深いものとなっています。

また、表情については大変可愛らしい表情をしており、土のぬくもりとともに、やさしさが溢れる郷土玩具として全国で親しまれるようになりました。彩色については、原色を使用し続けるという伝統を守りながらも、その表情は時代によって変化させてきました。伝統文化でありながらも、受け継ぐ部分と変化させる部分の両面を持っていることも「小幡でこ」の特徴の一つかもしれません。
「小幡でこ」を作る工程は、まず粘土を練り、その粘土を代々伝わる人形の型にはめ、乾燥させます。その後、型から乾燥した粘土を抜き、合わせて釜で焼きます。焼いた人形に彩色し、大きい作品については九代目の刻印を刻みます。これらの工程は大きさにもよりますが約3ヶ月はかかります。一度に大量生産することなく、一つひとつ丁寧に作り上げることが、多くの方から愛着を持っていただいていることに繋がっていると信じています。